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カンボジアの投資環境を良くするために
プノンペン経済特区(PPSEZ)の現状と今後の展望
ゼファーカンボジア社 所長 上松 裕士

1. ゼファー進出の経緯
(株)ゼファーは、国内では東京、大阪、札幌を中心にマンション、オフィスビルなどの不動産開発を行う創業14年の比較的若い会社です。海外事業は、3年前にアメリカの西海岸に住宅開発で進出したのが、初めてでした。そのような会社が、なぜカンボジアに?と疑問に思われる方が大半かと思いますが、そのきっかけは、民間の開発コンサル会社、日本開発政策研究所(JDI)の小林正一所長のお誘いです。
弊社は、2006年7月に地元華僑資本アトウッド社と合弁会社設立の調印を行い、正式にプノンペン経済特区の開発に参画したのですが、小林所長は、1996年に経団連ミッションでカンボジアを訪問されて以来、カンボジアの経済発展のための青写真づくりにご尽力され、2005年12月に経済特区政令が発布されるまでのお膳立てに深く関わってこられました。
弊社は「冒険と挑戦」をスローガンに、まだ日系企業の投資がほとんどないカンボジアで、先駆者利益を獲得すべく投資を決断したのです。
発電所(写真は1月)
2.
第一期工事の進捗
2007年1月より、141haの第一期インフラ工事をJDIによるCM方式で本格的に開始し、おかげさまでほぼ完了しました。現在4月の竣工式に向けて、3月より上下水施設、発電所の試運転を行います。カンボジアという条件の
中で、工事がほぼ予定通りの工程で進んだのは、奇跡に近いと私自身は思っているのですが、これはJDIから土木工事コンサルとして派遣されている勝俣陸男氏の、現場での日々のご尽力によるところが大きいです。
また、見た目にはわかりませんが、雨水調整池の水を、発電所のクーリングシステムに活用したり、雨期と乾期で水流を逆にして区域を囲むダイク(洪水防止用の堤防)へ流したりと、省エネ循環工法を採用しています。この実例は、昨年6月の国際土木学会でも勝俣氏により発表され、高く評価されました。
3. 進出予定企業の現状
昨年始めより、企業、政府機関、コンサル会社等、毎月10組前後のご訪問はいただき、それなりの注目度はあったのですが、恐らく「ホントに工事出来るの?」という懐疑心を持って見られていたので、なかなか企業の誘致にはつながらず、8月頃まではかなり苦労しました。
9月中旬にバンコクのデュシットタニ・ホテルで「勝負の」カンボジア投資セミナーを行ったのですが、予想を越える約170名の参加者を迎え、これを起点に誘致が活発化してきました。国別の大まかな傾向として、最初は、パートナー側の顔が利く地元の華僑系資本、次にカンボジアへの投資が比較的積極的なマレーシア、シンガポール、台湾系の華僑資本、現在は、韓国、日本資本も進出予定企業に入ってきました。華僑が最初で、韓国がその次、最後は日本と、21世紀のアジア諸国への投資の法則が、ここPPSEZにも当てはまっていると言えるでしょう。
ドライポート(写真は1月)
4.
第二期、三期工事への展望
現時点で第一期の約8割の区画は、契約を結んでいますので(仮契約含む)、今年の前半には、販売を完了する目標を立てています。現在、二期区画内に10haの進出検討中の外資大手飲料水メーカー、三期区画には鉄道復興事業落札業者(フランスTSO)と組んで、自由貿易区の構想等があり、引き続き二期、三期の開発に向け
て計画を練っているところです。当初の計画通り、2010年までには開発、販売完了の見通しを立てています。
5. 今後の課題
こうして、ご説明していると全てが上手く行っているかのような、印象を与えてしまうのですが、確かに大枠としては、良い方向に進んでいると言えます。一方、個々の課題は色々とあり、一つ一つ改善して行かなければいけません。
PPSEZとして出来ることには限界がありますが、ここでは、インフラ、官庁手続き、法務・税務の三点に絞り、問題点と改善策を論じてみたいと思います。
インフラ
カンボジアのインフラは、全般的にこれから整備が本格化する段階にあると言えます。特に電力は、オイルに大きく依存しているため、近隣諸国と比べて2倍前後割高で、これだけでも外国企業が、投資を躊躇する大きな要因となっています。PPSEZでは、民間として出来うる方策として、自前の発電所を構え、公共料金よりも10%安い価格で電力を安定供給させていただきます。
また、物流コストと所要時間もヴェトナムと比べると、大きく遅れをとっており、大幅な改善が必要です。PPSEZでは、敷地内のドライポートに税関職員を常駐させ、コンテナをいったん封印したら、国境や港ではいっさい開封されることなく、輸出出来るように、また輸入も同様に出来るよう、サービスを整備して行きます。税関はカンボジアに限らず発展途上国では、汚職の巣となりがちですが、3年後を目処に手続きを電子化して迅速かつ透明性の高いサービスを提供出来るよう、シンガポールとマレーシアの専門企業と連携して、準備を進めています。
官庁手続き
カンボジアは、Transparency
Internationalから汚職度指数世界ランキング179順中162番目にランキングされるほどの国です。様々な国際機関や諸外国から汚職防止法の国会可決を促されても、いっこうに実現しない国です。汚職に関しては、考えようですが、汚職自体は日本にもあります。ご存知の通り、役人と出入り業者との癒着、ゼネコンの談合、県庁の裏金等々。日本人の我々がカンボジアに来て、一番困るのは、会社登記や輸出入手続き等々の実務手続きの担当窓口レベルで、「袖の下」が必要なことでしょう。この点に関し、PPSEZでは経済特区管理事務所(通称ワンストップ・サービスセンター)での諸手続きのマニュアルを作成し、必要書類や手順、必要経費を文書化して、入居企業へ明示することを目指します。
ちなみに、上記指数ではカンボジアより汚職度の高い国として、ラオス、ミャンマーがランクインしています。昨今、日本からの投資が活発なヴェトナムでも123番目です。このことからカンボジアが投資対象国として突出して、汚職がひどい国というわけでもありません。問題は今後、どのように減らして行くかで、PPSEZはその先行事例をつくるよう努力します。
法務・会計税務
この10年位で、会社法や税法などビジネスを進めて行く上での、基本的な法律は整備されてきたのですが、個々の実務レベルの話しになると、解釈がまちまちだったり、現行の法律ではカバーされていないことが、少なからずあります。特に経済特区の事業は、カンボジアにとって新しいので、いくら弁護士や会計事務所に聞いても、はっきりしないことがあります。さらに地元企業の遵法精神は極めて低く、そのような企業との取り引きだけでも、日本ではあり得ない余計な神経を使います。
このような状況の中で、ビジネスを円滑に遂行するポイントは、次の二点、一つ目は、信頼出来る優秀な弁護士と会計事務所と常に連絡を取れる状況にしておき、何かあった時に、すぐ照会できるようにすること。会計監査は、思い切って初年度からPWCやKPMGなどの国際的監査法人に依頼すると、成長の基盤造りに役立つでしょう。二つ目は、カンボジア政府高官と強い関係を持つ有力者と、現地パートナーとして組み、法的、会計税務的解釈で当局側と食い違いが発生した際に、防波堤の役割を担ってもらうようにすることです。ただし、後者は現地パートナーを持つことのデメリットもありますので、PPSEZに進出される企業には、PPSEZ自体が、いざという時の「防波堤」の機能を果たすようにしたいと考えています。
6.最後に
今回、「カンボジアの投資環境」というテーマで執筆を承りましたが、既にPPSEZプロジェクトに相当金額を投資している弊社としては、投資環境の不備を指摘するのに留まるのではなく、「いかに投資環境を良くしていくか?」の視点に立ち、PPSEZをモデルケースとして、事業として成功させることが最重要課題です。
日本の基準を振りかざして、カンボジアの至らない点を批判することは、簡単です。しかし、これをビジネスの現場で行えば、現地パートナーやスタッフの反発を招くだけです。いったん、彼らの懐に入り込み、彼らの流儀を理解した上で、そこからいかに国際市場で競争出来る企業に発展させることが出来るかが、このPPSEZの仕事の難しさでもあり、面白みでもあると考えています。
PPSEZが、カンボジアへの日本を含めた外国投資の起爆剤となるべく、今後とも誠心誠意、努力していく所存ですので、何卒よろしくお願い申し上げます。

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